ソウルの延南洞(ヨンナムドン)のカフェに座っていると、30分以内に必ず目にする光景がある。ベビーカーが通り過ぎる。中を覗くと、赤ちゃんではなく犬が座っている。しかも一台ではなく何台もだ。

韓国を初めて訪れた人がよく口にする疑問がこれだ。「なぜ犬をベビーカーに乗せて歩くの?」答えは文化的な好みではなく、数字にある。

まず結論から

  • 韓国の世帯の29.2%がペットと暮らしている。2025年の政府調査基準で過去最大だ。
  • そのうち80.5%が犬。そしてその犬の大半は、マンションで飼いやすい小型犬だ。
  • アライグマ・ミーアキャットカフェは2023年12月から違法。検索に残っているだけだ。

韓国人はペットをどれだけ飼っているのか?

2025年の農林畜産食品部の調査で、ペット飼育世帯の割合は29.2%と出た。10軒に3軒の割合だ。この数字が重要なのは、値そのものより出所にある。今回の調査がペット分野の初の国家承認統計だからだ。それまで韓国のペットの数値は調査機関ごとにバラバラで、メディアが引用する数字も毎回違っていた。

29.2%
ペット飼育世帯の割合(2025年、過去最大)
1,546万人
ペット飼育者数 — 全人口の29.9%(2024年末)
546万頭
犬 — 1年で10万頭減少
217万頭
猫 — 1年で18万頭増加

最後の2枚を並べると、いま韓国で起きている変化が見える。犬は減り、猫は増えている。 単身世帯と共働き世帯が増えるにつれ、1日2回散歩させなければならない動物より、放っておいてもいい動物へと重心が移っているのだ。

地域の偏りも大きい。首都圏(ソウル・京畿・仁川)だけで305万のペット飼育世帯があり、これは全国のペット飼育世帯の51.7%にあたる。ソウルを歩いていて犬によく出会うのは錯覚ではない。

月平均の飼育費は12万1,000ウォン。エサ代だけでなく、トリミング、病院代、おやつ、そして後述するベビーカーまで含めた数字だ。


どんな動物を、どんな犬種で飼うのか?

🐾 ペットの種類別・飼育世帯の割合(2025年 農林畜産食品部)

動物割合備考
80.5%1世帯あたり平均1.11頭
14.4%1世帯あたり平均1.27頭
4.1%水槽単位
ハムスター・げっ歯類など1.0%その他小型哺乳類を含む
0.7%オウム・ブンチョウなど

犬が8割という割合は世界的に見ても高い。だがもっと面白いのはどんな犬かだ。

🐩
マルチーズ 20.4%
韓国の国民犬。成犬で3kg前後と、マンションとエレベーター文化に最も合うサイズだ。
🦮
プードル 18.9%
ほぼすべてがトイ・ミニチュアサイズ。毛が抜けにくい点が室内飼育で決定的だ。
🐕
ミックス犬 15.1%
3位がミックス犬という点が重要だ。保護犬の譲渡が増えた結果でもある。
🐈
コリアンショートヘア 44.7%
猫の半数近くがコショート。韓国の野良猫系統の総称で、保護・譲渡の割合が高い。

猫はコリアンショートヘア(44.7%)に次いでロシアンブルー(12.8%)、ペルシャ(9.6%)の順だ。犬の上位3種がすべて小型犬で、猫の1位が実質野良猫という組み合わせは、韓国の住居形態と譲渡経路をそのまま映し出している。庭のある家は珍しく、大型犬を飼うスペースのある世帯はさらに珍しい。

旅行者が知っておくと役立つこと

ソウルで大型犬をほとんど見かけない理由がこれだ。逆に珍島犬(チンドッケ)や豊山犬(プンサンゲ)のような韓国土着犬を見たいなら、都心ではなく地方や専門の犬舎を探す必要がある。珍島犬は天然記念物第53号に指定されており、珍島郡の外への搬出には別途手続きが伴う。


変わった動物を飼う人もいる?

いる。ただし割合は思ったより小さく、2025年を境に法律が大きく変わった。

動物福祉に関する国民意識調査基準で、鳥類が2.9%、爬虫類が1.4%、その他の哺乳類が0.3%程度だ。韓国でエキゾチックアニマルと呼ばれるカテゴリーには、オウム(オカメインコ・コザクラインコ)、ゲッコーやフトアゴヒゲトカゲなどのトカゲ、ハリネズミ、フクロモモンガ、フェレット、モルモットが入る。ソウルにはこれらだけを診るエキゾチックアニマル専門の動物病院もいくつかある。

2025年12月、「ホワイトリスト」制度が始まった

環境部は、個人が飼育・取引できる野生動物を承認された約900種に限定するホワイトリスト制度を施行した。内訳は哺乳類9種、鳥類18種、爬虫類664種、両生類209種だ。リストにない種は新たに迎え入れられない。既に飼っている個体は届け出後に飼育を続けられる設計になっている。

方向性は明確だ。韓国はこの10年でエキゾチックペットが急増し、いまその門を狭める段階に入った。

旅行者にとってより実質的な変化はカフェのほうだ。2023年12月14日から、動物園として登録されていない施設での野生動物の展示が禁止された。 かつて弘大(ホンデ)や江南(カンナム)に集まっていたアライグマカフェ、ミーアキャットカフェ、フェネックカフェはこの規制で閉店した。

ブログや旅行サイトにまだ残っている「ソウル アライグマカフェ」の情報は2023年以前のものだ。 いま合法的に営業している動物カフェは、①猫カフェ ②犬カフェ ③羊・アルパカのように家畜に分類される動物の牧場型カフェ、この3つだけだ。

なぜ犬をベビーカーに乗せるのか?

最初の疑問に戻ろう。韓国ではペット用ベビーカーを犬用ベビーカーと呼ぶ。犬+ベビーカーの合成語だ。

2023年、国内のある大手オンラインショッピングモールで犬用ベビーカーの販売量が乳幼児用ベビーカーの販売量を初めて上回った。 比率はおよそ57対43だった。この統計がその年のニュースを埋め尽くしたのは、犬が可愛いからではなく、同じ年に韓国の合計特殊出生率が0.72だったからだ。

犬用ベビーカーを使う本当の理由

感傷的な理由だけではない。①上位犬種が3〜5kg台の小型犬なのでベビーカーに入る ②老犬の関節への負担を減らす ③キャリーケースやベビーカーに入っていれば地下鉄・バスへの乗車や一部店舗への入店が可能になる。3つ目が決定的だ。犬用ベビーカーは愛情表現であると同時に通行証なのだ。

認識も一緒に動いた。ペットを飼っていない世帯の中でも「ペットは家族の一員」と答えた割合が68.2%だ。2018年の50.6%から大きく上がった。韓国でペットはすでに少数派の趣味ではなく、基本の背景になっている。

ただし摩擦もある。リードや鑑札などのルールをきちんと守っているかという問いに、飼い主は86.9%が「守っている」と答えたが、非飼育者のうちその言葉に同意した割合は39.9%だった。この47ポイントの隔たりが、いまの韓国のペットマナー論争を生んでいる。


旅行者がソウルで直接見られるもの

動物カフェ利用のコツ

  • 猫カフェ — ドリンク1杯の注文が入場料を兼ねる店がほとんど。手指の消毒、抱き上げない、寝ている猫を起こさないのが共通ルールだ。
  • 犬カフェ — 自分の犬を連れてくる客と、犬を見に来る客が混ざっている。入店前にどちらか尋ねるのが安全だ。
  • 野生動物カフェ — 看板が残っていても、触る・餌をやるのは禁止だ。勧めてくる店があれば、それ自体が規制違反だ。
  • ペット同伴カフェ — ソウルの延南洞・聖水洞(ソンスドン)・漢南洞(ハンナムドン)に密集している。犬を連れてこなくても入店はおおむね自由だ。

ペットを連れて入国する予定なら、手続きがもう一つある。検疫書類が必要で、入国後も地下鉄・バス・飲食店の大半はキャリーケースに入った小型動物しか認めない。韓国がペットに寛容に見えるのは事実だが、その寛容さは「小さく、カバンの中にいて、静かである」という条件の上に成り立っている。

データと出典

  • 農林畜産食品部「2025年ペット飼育実態調査」 — 国家承認統計として初の調査、2025年10月31日〜12月12日、全国17市道3,000世帯への訪問調査(標本誤差±1.79%p)
  • KB金融持株経営研究所「2025韓国ペットレポート」 — 2024年末基準の飼育世帯・頭数・犬種分布
  • 農林畜産食品部「動物福祉に関する国民意識調査」 — 鳥類・爬虫類などの飼育割合、ペットマナー認識の隔たり
  • 環境部 野生生物法改正 — 野生動物の展示禁止(2023年12月14日施行)、ホワイトリスト制度(2025年12月施行)
  • 犬用ベビーカーの販売比率は2023年の国内オンラインショッピングモール販売データ基準