ソウルで数日過ごせばすぐに気づく。ひとつのブロックにコンビニが2〜3軒あり、そこで食事もすれば宅配便も送り、化粧品まで買う。2025年末時点で4大ブランドの店舗数は5万3千店あまり、人口で割れば960人に1店という計算になる。この密度が、いまの韓国コンビニ文化を生み出した。

早わかり

  • 現在のコンビニ時代を切り開いた最初の店舗は1989年のセブンイレブン五輪店。いまはCU・GS25・セブンイレブン・イーマート24の4社体制である。
  • 顧客比率が最も高いのは20〜30代。そのため棚の回転が速く、流行商品は数か月単位で丸ごと入れ替わる。
  • いま20〜30代が手に取るのは簡便食・飲料・酒類・デザート・ビューティ・グッズ・生活サービスの7ジャンル。個別の商品名はすぐに変わるのでカテゴリーで捉えるのが正解だ。

韓国のコンビニはいつ始まったのか?

起点は1989年5月6日である。ソウル松坡区五輪洞——88オリンピックの跡地に造成されたオリンピック選手記者村の商店街に、セブンイレブン五輪店がオープンした。コリアセブンが前年の1988年に米サウスランド社(セブンイレブン本社)と技術提携を結び、導入したかたちだ。路地ごとに町のスーパーがあった時代に、24時間灯りをともし定価で売る店は、それだけで物珍しい見物だった。

実はそれ以前にもコンビニはあった

韓国の地に最初に誕生したコンビニは、1982年11月にロッテショッピングがソウル新堂洞に出したロッテセブンである。ただし24時間営業・少量即時購入という概念が当時の消費水準に合わず、1984年に撤退した。そのため業界では一般に1989年のセブンイレブン五輪店を、現在まで続く韓国コンビニの出発点とみなしている。

翌1990年、ふたつのブランドが数か月差で参入する。10月にソウル松坡区可楽洞でファミリーマート可楽市営店が、12月に東大門区回基洞でLG25慶熙店がオープンした。このふたつが、いまのCUとGS25である。名称が変わったタイミングが異なるだけだ。LG25は2005年にGSグループがLGから分離したことでGS25となり、ファミリーマートは2012年6月、“あなたのためのコンビニ(CVS for You)”を意味するCUへと看板を掛け替えた。

最も遅れて参入したのは新世界グループである。2013年末、イーマート取締役会が韓国発のブランド「With Me」(当時80〜90店舗)の買収を決議して業界に足を踏み入れ、2017年7月にイーマート24へと改称した。

🏪 韓国4大コンビニブランド年表

ブランドスタート現名称になった年運営会社
セブンイレブン1989年 五輪店(現コンビニ時代の始まり)コリアセブン(ロッテ)
CU1990年 ファミリーマート可楽市営店2012年BGFリテール
GS251990年 LG25慶熙店2005年GSリテール
イーマート242013年末 With Me買収2017年新世界グループ

2022年には、最後まで残っていた日本発ブランド「ミニストップ」の韓国内約2,600店舗をコリアセブン側が3,133億ウォンで買収した。これにより韓国コンビニ市場から日本ブランドは姿を消し、国内4社体制が固まった。

1989
現コンビニ時代の幕開け(セブンイレブン五輪店)
53,266
4社店舗数(2025年末)
-1,586
2024年末比の減少 — 1988年以降初の年間マイナス
13.9%
流通売上に占めるシェア(2026年3月、オンライン・百貨店に次ぐ3位)

数字のなかで注目すべきは3つ目のマスである。2025年のコンビニ店舗数は前年より1,586店減少した。1988年に業態が定着して以来、初めて経験する年間マイナスだ。出店競争で押し切る時代は終わり、いまや1店舗で何をどれだけ売るかの勝負に移行したことを意味する。このあと見ていく売り場の変化スピードのほとんどは、ここに起因している。


なぜ行くたびに商品が入れ替わっているのか?

韓国のコンビニを初めて体験する人が最も口にするのがこれだ。先月あった商品が今月はない。理由はシンプルである。コンビニの顧客の中心が20〜30代であり、この世代の流行サイクルがそのまま売り場に反映されるからだ。

酒類コーナーを見れば流れは一目瞭然だ。CUのハイボール売上は2023年553.7%、2024年315.2%、2025年190.1%と成長を続けた。GS25でも2024年に376.7%跳ね上がった。CUのワイン・洋酒・ハイボール売上合計に占めるハイボールの割合は、2022年の8.3%から2023年36.3%、2024年1月には38.6%まで上昇した。ところが2026年現在、重心はすでに別の酒へと移っている。

GS25の酒類スマートオーダープラットフォームワイン25プラスにおいて、2026年に初めてシングルモルトウイスキーが全酒種を抑えて売上1位に立った。10万ウォン以上のプレミアムシングルモルトの売上は前年比126%増。一方、ハイボール用に買われていた2〜4万ウォン台のブレンデッドウイスキーは約30%減少した。ほんの2〜3年前まで棚を埋め尽くしていた流行が、そっくりその座を明け渡したのだ。

デザートもコラボ商品も、同じスピードで回っている。だから「いま韓国のコンビニで何を買うべきか」を特定の商品名でまとめたリストは、半年も経てばほぼすべてが情報として古くなる。以下は個別商品ではなくカテゴリーで整理した地図だ。この枠組みはそう簡単には変わらない。

読み方

棚の前で迷う必要はない。以下の7ジャンルのうち、どこをのぞくかだけ決めればいい。各カテゴリーのなかで「いま何が売れているか」は、棚の最前列と1+1 / 2+1タグが教えてくれる。コンビニは、売れるものをいちばん前、いちばん目線の高さに置くからだ。


20〜30代はコンビニで何を買うのか — 7つのカテゴリー

🍱
即席調理・簡便食
弁当、おにぎり、即席ラーメン調理機。最近ではチキン・ピザ・ベーカリーまで店内で焼き・揚げる。成長率が最も高い軸。
🥤
飲料・コーヒー
氷カップに注ぐRTDコーヒー、ゼロ炭酸、イオン飲料。カフェ1杯分の3分の1で済ませるのが基本の方程式。
🥃
酒類
焼酎・ビール一辺倒から、ハイボール・ワイン・ウイスキー・ノンアルコールへと軸が分散。ひとり飲みと家飲みが育てたコーナー。
🍰
デザート・スナック
回転がいちばん速い売り場。2つ以上の食感を同時に楽しめる商品が強い。SNSで品切れになるアイテムのほとんどはここから生まれる。
💄
ビューティ・パーソナルケア
3,000〜5,000ウォン台のカラーメイクと少量スキンケア。緊急時に買う場所から、わざわざ探して行く場所へ変わりつつある。
💿
グッズ・アイドルアルバム
キャラクターコラボ商品、ポップアップ、そしてK-POPアルバム。コンビニがカムバック期の流通チャネルになった。

1. 即席調理と簡便食 — 成長のエンジン

最も確かな成長軸だ。CUの即席食の売上伸長率は2024年13%、2025年21.8%、2026年1〜5月24.5%と年々加速している。GS25は2025年23.9%・2026年1〜5月19.2%、セブンイレブンは2025年20%・2026年1〜5月16%の成長を遂げた。弁当ひとつが4,000〜6,000ウォン台でありながら、外食価格の高騰に伴い「安い一食」ではなく「納得の一食」の地位を獲得したのである。

最近の競争の焦点は価格ではなく味に移った。3社とも主力の簡便食ラインをリニューアルし、クオリティで勝負をかけている。店内で直接調理するチキン・ピザ・ベーカリーの比率も着実に増えている。コンビニ飯という言葉が、もはや自嘲的ではない理由だ。

2. 飲料とコーヒー — 1日2回立ち寄る理由

20〜30代がコンビニを最も頻繁に開ける理由は飲料である。氷カップを買い、隣のRTDコーヒーを注いで飲む組み合わせは、事実上「韓国式アイスアメリカーノ」の最安値バージョンだ。店内で淹れるレギュラーコーヒーライン(セブンカフェ・カフェ25など)やゼロカロリー炭酸飲料も拡大を続けている。このカテゴリーは流行というより習慣に近いため、売り場の構成が最も安定している。

3. 酒類 — 焼酎・ビールから嗜好消費へ

先に見たハイボールとシングルモルトが、このコーナーの主役だ。コンビニの酒類は「安く酔うための酒」から「選んで飲む酒」へと性格を変えた。ワイン、低アルコールリキュール、ノンアルコールビールまで並ぶようになり、売り場の間口そのものが広がった。とくにノンアルコールは、独立したゾーンを設ける店舗が増えている。

4. デザートとスナック — 最も速く変わる売り場

コンビニでいちばん回転が速いコーナーだ。テレビやSNSで話題になったコラボデザートが、事前予約開始20分で用意した2万個を完売することも珍しくない。このカテゴリーで特定の商品を推すのは事実上無意味で、**「いま棚の最前列にずらりと並んでいるもの」**が、すなわち現在の正解である。

5. ビューティ — 緊急用から「わざわざ行く」場所へ

コンビニ美容という言葉が生まれた。CUの化粧品売上は2023年28.3%、2024年16.5%、2025年1〜11月21.4%と成長し、その売上の約70%が10〜20代から来ている。セブンイレブンは2025年下半期に本格参入して以降、2026年1月1日〜6月21日のビューティ売上が前年比30%増加した。販売を牽引するのは3,000〜5,000ウォン台のティントのような低価格カラーメイクと、トラベルサイズの少量スキンケアである。同期間にセブンイレブンのビューティにおける外国人顧客の売上は71%増えた——旅行者にとっても、もはやひとつのショッピングコーナーだという証しだ。

6. グッズとアイドルアルバム — コンビニがカムバックの舞台になった

最も新しく加わったカテゴリーである。GS25が2023年にアイドルアルバムの販売を始めて以降、2026年1〜7月の累計アイドルアルバム・コラボ商品の売上は、2023年の年間比で100倍に跳ね上がった。カムバック時期に合わせてアルバムを発売し、コラボ商品を同時に展開するかたちだ。興味深いのは購入層で、2026年上半期のアイドルアルバム売上の70%以上が外国人決済だった。

7. 生活用品と便利サービス — 棚の外のコンビニ

常備薬、使い捨て用品、傘、充電ケーブルなどの生活用品、そして宅配便・ATM・チケット発券などのサービス利用が全世代で伸びている。コンビニアプリで在庫を検索し、予約購入まで行う流れも定着した。いまやコンビニは物を売る場所というより、「コンビニ圏」という言葉のとおり、生活インフラに近い存在である。


高いと思っているのになぜ通うのか?

韓国人自身も、コンビニが安いとは思っていない。オープンサーベイの2026年調査では、購入者の76.6%、つまり4人中3人がコンビニを「高い」と認識していた。ところが同じ調査で、**84.1%が「コンビニがなくなったら惜しい、あるいは完全には代替できない」**と答えている。

数字で見ると消費パターンは次のように再編されている。コンビニ利用率は2022年の88.8%から2026年には83.1%へ、月平均訪問頻度は10.7回から8.5回へと下がった。代わりに1回あたりの平均支出額は毎年上がっている。行く回数は減り、使う額は増える方向へとシフトしているのだ。だから1+1・2+1といったバンドルプロモーション中心の消費が鮮明になり、アプリでセール商品を事前にチェックしてから行く習慣も同時に根づいた。

旅行者にとってはどんな意味があるのか?

韓国のコンビニはすでに観光動線の一部である。2026年上半期、GS25の外国人決済売上は前年同期比60.2%増、CUも1〜5月の海外決済手段による決済額が65.7%増加した。7月には江陵・束草・海雲台・済州など海沿いの観光地の店舗約100店で、外国人売上が136.9%跳ね上がった。外国人が最も買ったのは水・飲料で、その次がラーメン・牛乳・スナックだった。外国人決済が最も多いエリアは明洞、その次が弘大と済州である。

GS25は漢江式の即席ラーメン調理機と人気飲料・記念品を集めた外国人特化型店舗Kステーションを、2026年6月末時点で91店舗に導入しており、年末までに200店舗へ拡大する計画だ。

コンビニ実践Tips 4選

  • 1+1 / 2+1タグを先にチェックする。同じカテゴリーでいま最も売れている商品は、たいていここに掛かっている。
  • 弁当は会計前に「温めてください」と伝える。韓国語で「デウォジュセヨ」と言えば通じる。電子レンジはほとんどの店でセルフでも使える。
  • 即席ラーメン調理機のある店を探す。袋麺を買ってその場で調理できる。調理機は全店にあるわけではないので要注意。
  • ブランドごとにPB商品が異なる。同じカテゴリーでもCU・GS25・セブンイレブン・イーマート24の自社商品は重複しないため、ふたつのブランドを交互にのぞけば楽しみは倍になる。

ここに記した成長率や順位は掲載時点のものであり、コンビニの棚はそれよりはるかに速く動く。ブランドの骨格とカテゴリーの地勢だけを知って店に入れば、あとは棚が教えてくれる。

出典

  • オープンサーベイ「コンビニトレンドレポート2026」(満15〜59歳1,203名/直近1年以内購入経験者1,000名)
  • 産業通商資源部 主要流通業体売上動向 および KDI経済情報センター(2025年末店舗数・流通業態別売上シェア)
  • BGFリテール・GSリテール・コリアセブン プレスリリース(即席食・酒類・ビューティ・アイドルコラボ売上増減、外国人決済売上)
  • ブランド沿革:BGFリテール沿革、GSリテール、コリアセブン、新世界グループ公開資料

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