まず結論から
- 韓国の年末の寄付シーズンには2つのシンボルがあります。ハンドベルを鳴らす救世軍の赤い社会鍋と、光化門広場に立つ共同募金会の「愛の温度塔」です。
- 社会鍋は1928年12月15日から韓国で鐘を鳴らしてきました。2025年は11月28日〜12月31日に全国約300か所で行われ、物品寄付を除いて47億ウォンが集まりました。
- 温度塔は1度=全国目標額の1%。キャンペーンは12月1日〜1月31日の62日間で、100度なら目標達成です。
- 2026年10月30日時点で、どちらも2026年の開始日は未発表。旅行者なら、鍋に現金を入れるのがいちばん手軽です。
12月の明洞を歩いたり、ソウル駅を出たりすると、目より先に耳が気づきます。三脚に吊るされた赤い鍋の横で、赤いコートの人が振る小さな真鍮のベルの音。光化門駅から数分歩けば、巨大な温度計のついた塔が数日ごとに少しずつ目盛りを上げていきます。
前者は救世軍の자선냄비(チャソンネンビ、日本でいう「社会鍋」)、後者は사랑의열매(サランエヨルメ=愛の実、社会福祉共同募金会)の사랑의 온도탑(愛の温度塔)です。それぞれの正体、数字で見る韓国の寄付事情、そして旅行者の参加方法をまとめました。
12月のソウルで見かける赤い鍋は何?
1928年12月15日から韓国で続く、救世軍の街頭募金です。鍋ごとにボランティアや救世軍の士官・信徒が立ってベルを鳴らし、通りがかりの人が現金を入れていきます。
韓国救世軍が紹介する由来はこうです。1891年、サンフランシスコの士官がクリスマスに貧しい人々約1,000人に食事を出す方法に悩み、オークランドの埠頭に大きな鉄鍋を掲げて「この鍋を煮立たせよう」と書き添えた。この方法が広まり、1908年に活動を始めた韓国では、1928年にソウルで最初の鍋が立ちました。救世軍は2025年のキャンペーンを97回目と数えています。
背景
救世軍は1865年、ロンドンでウィリアム・ブースとキャサリン・ブースが創設したプロテスタントの教派です。あえて軍隊式の用語を使い、教会は「小隊(영문)」、牧師は「士官」、制服は韓国語で「軍服」と呼びます。韓国語名の구세군(クセグン)も「世を救う軍隊」という意味です。2013年からは別法人の救世軍社会鍋本部が鍋のキャンペーンを担い、運営費は寄付金品法の上限である寄付額の15%以内に収めているとしています。
🔔 韓国救世軍の社会鍋キャンペーン(救世軍の結果報告による、2026年10月時点)
| シーズン | テーマ | 鍋の数 | 報告書に記載の募金額 |
|---|---|---|---|
| 2023 | Sound of Love | 330 | 社会鍋で約21億ウォン |
| 2024 | Light of Love | 330、ボランティア約2万人 | 報告書に総額の記載なし |
| 2025(11/28〜12/31) | Light of Hope | 全国約300か所 | 社会鍋期間の総額47億ウォン(物品寄付を除く) |
| 2026 | Light of Life | 未発表 | 2026年10月30日時点で期間未発表 |
2025年の数字は読み方に注意が必要です。47億ウォンは社会鍋期間全体の総額で、街頭の募金と企業からの寄付は分けられていません。ファイナンシャルニュースは、2025年12月22日時点の累計が約21億8,000万ウォンで、前年同時期(約19億9,000万ウォン)を上回ったと報じました。
支払い方法も変わってきました。ソウル市の「내 손안에 서울」は2012年にクレジットカード対応の「デジタル社会鍋」を、2020年には後払い交通カード・ゼロペイ・Nペイ・QRに対応した新村駅の非対面型の鍋を紹介しています。ニューシスによると、2025年シーズンにはNFC方式が初めて導入され、アプリなしでスマホをかざすと約14秒で寄付できるようになりました。
光化門の「愛の温度塔」はどう上がる?
全国の募金目標額の1%が集まるたびに1度上がり、100度で目標達成です。共同募金会は年末の희망나눔캠페인(希望分かち合いキャンペーン、12月1日〜1月31日の62日間)に合わせ、全国17の市・道に温度塔を立てます。中央の塔は光化門広場にあり、2025〜26年のキャンペーンの開幕式・閉幕式と、その前年の閉幕式もここで開かれました。
キャンペーンは名前より歴史が長いのです。共同募金会によると、もともとの「恵まれない隣人を助ける募金」が1999年12月に翌年の年号をつけた「希望2000隣人助けキャンペーン」に変わり、2007年12月に今の希望分かち合いキャンペーンとして定着しました。2025〜26年の塔は、一般公募で選ばれた「煙突」がモチーフ。分かち合いの温もりが煙突を通って広がる、という意味だそうです。
🌡️ 直近2回の希望分かち合いキャンペーン(世界日報・ニューシスの報道による)
| キャンペーン | 期間 | 目標額 | 募金額 | 最終温度 |
|---|---|---|---|---|
| 希望2025 | 2024年12月1日〜2025年1月31日 | 4,497億ウォン | 4,886億ウォン(暫定) | 108.6度 |
| 希望2026 | 2025年12月1日〜2026年1月31日 | 4,500億ウォン | 5,124億ウォン | 113.9度 |
ニューシスは2026年2月2日の閉幕式を伝え、2025〜26年のキャンペーンが113.9度で終わり、初めて5,000億ウォンを超えたと報じました。2025年通年の共同募金会の募金額は9,864億ウォン、個人寄付者は89万6,283人、法人寄付者は4万2,752社でした。
韓国人は実際どれくらい寄付している?
だいたい4人に1人です。京郷新聞の報道によると、国家データ処(旧・統計庁)の2025年社会調査で「過去1年に寄付した」と答えた人は26.1%で、2023年の23.7%から上がりました。ヘラルド経済(米州版)も同じ数字を報じています。
📈 過去1年に寄付した人の割合・社会調査(京郷新聞2025年11月12日の報道による)
| 調査年 | 過去1年に寄付した |
|---|---|
| 2015 | 29.9% |
| 2017 | 26.7% |
| 2019 | 25.6% |
| 2021 | 21.6% |
| 2023 | 23.7% |
| 2025 | 26.1% |
コロナ禍で下がり、その後持ち直していますが、2015年の水準にはまだ届きません。同じ調査では、今後1年以内に寄付するつもりの人が39.6%、寄付の理由のトップは「人を助けると幸せだから」(28.7%)。遺産の一部を社会に寄付したい人は22.2%で、2011年の集計開始以来もっとも低くなりました。
つまり温度塔の大きな数字を作っているのは主に企業の寄付で、多くの人が実際に手を動かすのは鍋に入れる小銭や紙幣のほう。韓国のもうひとつの「お金の封筒」文化が気になるなら、結婚式のご祝儀ガイドもどうぞ。
旅行者が社会鍋や温度塔に寄付するには?
赤い鍋に現金を入れればOK。口座もアプリも韓国の電話番号もいりません。ほかの方法もありますが、多くは韓国の携帯電話か銀行口座が前提です。
💳 寄付の方法と必要なもの(2026年10月時点)
| 方法 | 救世軍の社会鍋 | 共同募金会(愛の温度塔) |
|---|---|---|
| 現金 | 街頭の鍋に直接 | キャンペーンページに記載なし、ほかの方法で |
| スマホのタッチ・QR | 2025年にNFC・現地QRが報道 | 2025〜26年に光化門の塔でQR簡単決済の寄付が報道 |
| オンライン | thesalvationarmy.or.kr(韓国語) | chest.or.kr:簡単決済・クレジットカード・口座振替 |
| 電話(ARS)・SMS | 060-700-9390(1回3,000ウォン) | ARS 060-702-1004、SMS #9004 |
| 銀行振込 | 農協 301-0299-1916-81 | chest.or.krに支部ごとの口座を掲載 |
実用メモ
- 12月はポケットに1,000ウォンか5,000ウォン札を1枚。誰でも確実に使える唯一の方法です。
- 海外カードでのタッチ・QR決済は保証できません。海外カードや決済アプリが通るかは確認できず、060番号と#9004のSMSは韓国の携帯回線が必要です。
- 旅行者でも使える韓国の決済アプリは韓国のキャッシュレス決済アプリ、ウォンをお得に手に入れる方法はソウルの両替・ATM手数料を参考に。
ソウルで社会鍋と温度塔が見られる場所は?
大きな駅、デパート、明洞周辺、そして光化門広場の温度塔です。2026年10月30日に確認した救世軍サイトの社会鍋マップには、全国238か所、うちソウル60か所が載っていました。サイトには当日の状況で設置されないこともあると書かれており、2026年の場所はまだ発表されていません。
光化門広場は12月の夕方に寄りやすい場所です。手前に温度塔、奥に光化門。冬のイルミネーション巡りや清渓川さんぽと組み合わせてみてください。シーズン全体はソウルのクリスマス2026、広場から歩ける普信閣の除夜の鐘もあわせてどうぞ。
社会鍋のベルを鳴らすボランティアはできる?
救世軍は12月だけ、最低2時間単位で社会鍋のボランティアを受け付けています。FAQによると1日最大4コマ(8時間)まで、原則2人1組、小学生は大人の付き添いが必要で、会員登録なしで申し込めます。
申込ページは韓国語で、外国人旅行者が参加できるかはFAQに書かれていないため、予定を立てる前にサイトの1:1問い合わせで確認してください。歌や演奏など自分の特技で募金する「スペシャル社会鍋」もあり、2025年は24チームが参加しました。
データと出典
- 韓国救世軍 — 社会鍋の紹介(1891年の由来、1928年12月15日に韓国初の鍋)
- 韓国救世軍 — 沿革(1908年に韓国で活動開始、2019年スマート募金)
- 韓国救世軍 — 2023・2024・2025年社会鍋キャンペーン結果報告
- 韓国救世軍 — 社会鍋キャンペーンページ・寄付口座・社会鍋マップ(2026年10月30日確認)
- 韓国救世軍 — 2026社会鍋AI映像コンテスト告知、2026年テーマ(2026年9月30日)
- 韓国救世軍 — FAQ(ボランティア、運営費)
- 社会福祉共同募金会(愛の実) — 希望分かち合いキャンペーン(期間、1度=1%、17基の温度塔、沿革)
- 社会福祉共同募金会 英語サイト — 寄付プログラム(12月1日〜1月31日、62日間)
- ニューシス — 希望2026は113.9度・5,124億ウォン、2025年通年実績(2026年2月2日)
- スマートトゥデイ — 希望2026開幕、目標4,500億ウォン、初日1,300億ウォン(2025年12月)
- 世界日報 — 希望2025は108.6度(2025年2月3日)
- ニューシス — 2025年社会鍋の光化門広場開始式、NFC寄付(2025年11月28日)
- ファイナンシャルニュース — 2025年12月22日までの社会鍋累計
- ソウル市「내 손안에 서울」 — クレジットカード対応のデジタル社会鍋(2012年12月)
- ソウル市「내 손안에 서울」 — 新村駅の非対面型社会鍋(2020年12月)
- 京郷新聞 — 2025年社会調査の寄付統計(2025年11月12日)
- ヘラルド経済(米州版) — 2025年社会調査の寄付経験率(2025年11月)