南楊州は、気づかないうちに通り過ぎてしまう街です。ソウルの東側をぐるりと囲み、73万人以上が団地に暮らし、その多くが毎朝ソウルへ通勤します。地下鉄8号線が乗り入れ、4号線は市の北端まで延びています。

けれども漢江を東へたどり、二つの支流が合流するあたりまで来ると、街の表情は一変します。鳥安面の川辺には、韓国でもっとも有名な改革派の学者・丁若鏞が生まれ、眠る家があります。その上の山には、15世紀の文人が「東方一の眺め」と称えた寺。金谷洞には韓国最後の二人の皇帝が眠り、北部では世祖の陵が500年以上守られてきた森の中にあります。

まず結論から

  • 場所:ソウルのすぐ東と北東。8号線で蚕室から別内まで27分。見どころは京義・中央線(雲吉山、八堂)と京春線(金谷)沿いに。
  • 向いている旅:宮殿の混雑なしに朝鮮の歴史をたどる旅、川を見下ろす寺、漢江沿いのサイクリング。
  • 必見:茶山遺跡と実学博物館、水鐘寺、高宗・純宗の陵である洪裕陵。
  • 必食:鳥安面の川沿いの店で、スンドゥブ、ウナギの炭火焼き、冷たいトンチミ麺。
  • 月曜は避けて:実学博物館と王陵は休みです。

ソウルから南楊州への行き方は?

目的地で路線を選びます。鳥安面(茶山・水鐘寺・川辺)は京義・中央線、洪裕陵は京春線、光陵は4号線です。 南楊州は面積約458km²と広く、見どころが散らばっています。2024年8月に開通した8号線の別内延伸が市内への最速ルートですが、別内は新しい団地街で、大きな見どころはありません。

🚇 ソウル→南楊州の見どころ(駅数は路線図、バスは実学博物館の交通案内より)

目的地ルート所要時間(目安)メモ
別内(市中心部・最速)8号線 蚕室から27分2024年8月開通
水鐘寺・水の庭園・自転車道京義・中央線 清凉里 → 雲吉山12駅雲吉山駅は2008年開業
実学博物館雲吉山駅 → 58番バス乗車約20分20〜40分間隔
茶山遺跡江辺駅から2000-1・2000-2番、または京東市場から167番バス+徒歩約30分「茶山遺跡入口」で下車
洪裕陵京春線 上鳳 → 金谷7駅金谷駅から徒歩
光陵4号線で榛接へ—榛接線は2022年3月19日開通、その先はバスかタクシー

実学博物館の案内によると、2000-1・2000-2番は30〜90分間隔、167番は7〜15分間隔です。京義・中央線の八堂・徳沼・陶深駅からも同じバスで茶山遺跡入口へ行けます。

南楊州は何で知られている?

茶山・丁若鏞と、北漢江と南漢江が出合う場所です。 丁若鏞(1762〜1836)、号は茶山。学問を行政・技術・経済へと向けた실학 実学の中心人物です。自ら考案した起重機を水原華城の築城に用い、1801年のカトリック弾圧を生き延びて南方で約18年の流配生活を送り、その間に地方官の心得を説いた『牧民心書』など多くの著作を残しました。晩年は生まれ故郷の川辺に戻り、家を여유당 与猶堂と名づけ、そこで世を去りました。

六つの年号で見る南楊州

  • 1458年 — 金剛山から戻る途中の世祖が夜に鐘のような音を聞き、雲吉山に「水の鐘の寺」水鐘寺を建てたと伝わります(それ以前から寺があったとみる説もあります)。
  • 1468年 — 世祖が現在の榛接邑の光陵に葬られます。世祖が保護を命じた周囲の森は、のちに国立樹木園になりました。
  • 1762年 — 丁若鏞が現在の鳥安面陵内里にあたる馬峴に生まれます。1836年、同じ地で死去。
  • 1919年 — 高宗が金谷洞の洪陵に葬られ、ソウル・清凉里にあった明成皇后の陵もここへ移されます。息子の純宗は1926年に裕陵へ。
  • 1980年 — 楊州から南楊州郡が分かれ、1995年に渼金市と統合して現在の南楊州市に。
  • 2009年 — 光陵と洪裕陵が、ほかの朝鮮王陵とともにユネスコ世界遺産に登録されます。

合流点そのものは두물머리 トゥムルモリ、「二つの水が出合う所」と呼ばれます。有名な展望ポイントは川の楊平側ですが、いちばんの眺めは南楊州側、高い水鐘寺から見下ろす景色です。


南楊州の見どころは?

1日の大半を鳥安面(茶山遺跡・実学博物館・水鐘寺・川辺)で過ごし、王陵を一つ加えるのがおすすめ。 鳥安面の見どころは近くにまとまっていますが、王陵は市内の別の場所です。

📜
茶山遺跡&実学博物館
丁若鏞の家と墓、朝鮮の実学者たちを紹介する無料の博物館。
🔔
水鐘寺
二つの漢江の合流点を見下ろす雲吉山中腹の寺。茶室あり。
🚲
水の庭園&北漢江自転車道
雲吉山駅そばの無料の川辺公園。旧線路が自転車道に。
👑
洪裕陵
高宗と純宗、韓国の二人の皇帝の陵。中国の皇帝陵の様式。
🌲
光陵
15世紀から守られてきた森の中の世祖の陵。国立樹木園の隣。

茶山遺跡と実学博物館(鳥安面)。 遺跡には丁若鏞が暮らした与猶堂があり、裏の斜面に墓、そして記念館があります。向かいの実学博物館は京畿文化財団が運営し、実学者たちと中国・日本とのつながりを紹介しています。無料の定時解説(約40分)はロビー集合で、火〜金曜と日曜は11:00と14:00、土曜は11:00、13:30、15:00。全義李氏の寄贈資料を集めた特別展が2026年11月19日から2027年3月1日まで開かれます。

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水鐘寺(雲吉山・鳥安面)。 1458年、川辺に泊まった世祖が夜に鐘の音を聞き、岩から滴る水が鐘のように響く洞窟で十八羅漢像を見つけ、その音にちなんで寺を建てたと伝わります。2本のイチョウはその時に植えられたとされます。朝鮮初期の大文人・徐居正(1420〜1488)は「東方一の眺めを持つ寺」と称えました。境内からは、鄭敾が描いた二つの川の合流点を真下に見下ろせます。茶室・三鼎軒は、ここで丁若鏞を訪ねた茶僧・草衣にゆかりのある茶の伝統を受け継いでいます。大変なのは上り。寺は雲吉山の中腹にあり、雲吉山駅側から急な道を登ります。

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水の庭園、陵内駅と自転車道。 水の庭園は北漢江の岸辺にある無料・24時間開放の生態公園で、雲吉山駅から歩いて行けます。2008年に中央線が複線化された際、約3.5km離れた小さな陵内駅に代わって雲吉山駅ができました。陵内の旧駅舎(茶山路384)はいまは休憩所兼フォトスポットで、線路の一本は自転車道になっています。雲吉山の近くでは、旧北漢江鉄橋が自転車と歩行者用の橋として楊平側の両水里へ渡っています。よく一緒に語られる「水音の道(물소리길)」は楊平のトレイルで、南楊州の遊歩道網は「茶山の道(다산길)」です。

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洪裕陵(金谷洞)。 一つの敷地に二つの陵があります。高宗と明成皇后の洪陵、純宗と二人の皇后の裕陵です。高宗が1897年に大韓帝国を宣布したため、陵は朝鮮王の形式ではなく明の皇帝陵にならっています。通常のT字形の丁字閣の代わりに正面5間の寝殿が建ち、参道には麒麟、象、ヘテ、獅子の石像が並びます。韓国の王陵でほかに似たものはありません。京春線の金谷駅から歩いて行けます。

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光陵(榛接邑プピョン里)。 世祖と貞熹王后が、一つの丁字閣を共有しながら別々の丘に眠ります。この配置はここで初めて用いられました。世祖は費用を抑えるため石室も屏風石も使うなと遺言し、そのため十二支像は欄干の柱に刻まれています。世祖が守らせた森が光陵の森となり、国立樹木園(1987年開園、1999年に国立へ昇格)は南楊州の榛接邑と抱川の蘇屹邑にまたがっています。混同に注意:陵は南楊州、樹木園の代表住所は抱川側です。

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🎫 観覧案内(実学博物館公式サイト、国家遺産庁の王陵規定、南楊州市)

スポット時間料金休業日
実学博物館火〜日 10:00〜18:00、最終入館17:30無料月曜、1月1日、旧正月・秋夕
茶山遺跡日中無料—
水の庭園24時間無料—
洪裕陵/光陵王陵の開園時間(季節で変動)大人1,000ウォン、韓服着用時と毎月最終水曜は無料月曜

南楊州ではどこで食べて、どこでお茶を?

鳥安面の川沿いで、できたてのスンドゥブ、ウナギの炭火焼き、冷たいトンチミ麺を。光陵へ行く日は、そば粉のクレープで包む焼肉を。 南楊州にはこれといった名物料理はありませんが、北漢江と八堂湖沿いの食堂は昔からソウルの日帰り客を迎えてきました。以下の4軒はいずれも韓国観光公社に掲載され(2025年更新)、京畿観光公社の2026年のレストラン情報にも載っています。営業時間は韓国観光公社の掲載情報によるもの。遠出の前にNaverマップで確認を。

キワチプ・スンドゥブ(鳥安里、北漢江路133)——北漢江の川べりにある豆腐料理の店。国産大豆だけを使い、目の細かい布袋で豆乳をこす昔ながらの方法で豆腐を作り、一日中できたての순두부 スンドゥブ(おぼろ豆腐)をすくって出します。注文はスンドゥブ定食、またはコンタン(大豆スープ)定食。無休、10:30〜20:30(ラストオーダー20:00)。

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カムナムチプ(茶山路747番ギル45)——実学博物館と同じ道沿いにある、八堂湖を眺めながら食べられるウナギ料理の店。甘い醤油だれのウナギ焼きか、自家製コチュジャンで作るナマズの辛い鍋を。11:00〜20:00(ラストオーダー19:30)、月曜定休(祝日の月曜は営業)、旧正月・秋夕の連休も休み。

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チュギョジュヌン・トンチミククス(松村里、北漢江路547)——店名は「たまらなくうまいトンチミ麺」といった意味。氷の浮いた동치미 トンチミ(大根の水キムチ)のスープに麺と卵をのせた一杯で、寒い日は温かいマンドゥスープも。どんぐりのムクや緑豆のチヂミを添えて。川沿いの道を走るサイクリストの定番の休憩所で、川向こうは両水里、雲吉山駅から車で約5分。10:00〜20:00(平日15:30〜16:30休憩)、月曜定休。

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光陵ハノクチプ(榛接邑、光陵内路36)——光陵を訪ねる日のランチに。炭火で焼いた豚肉か牛肉を薄いそば粉のクレープで包んで食べる店で、平壌冷麺もあります。平日11:00〜15:50(昼のみ)、週末11:00〜20:50、火曜定休。

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眺めのいいお茶なら、最後は水鐘寺の茶室へ。丁若鏞の号「茶山」は文字どおり「茶の山」で、寺は彼が草衣禅師と分かち合った茶の伝統を今に伝えています。

🍽️ 南楊州の地元グルメ一覧(韓国観光公社の掲載情報、2025年更新)

店名エリア注文組み合わせ
キワチプ・スンドゥブ鳥安里・川沿いスンドゥブ定食雲吉山、水の庭園
カムナムチプ鳥安面・茶山路ウナギの焼き物実学博物館、茶山遺跡
チュギョジュヌン・トンチミククス松村里・川沿いの道トンチミの冷たい麺自転車道、水の庭園
光陵ハノクチプ榛接邑焼肉のそば粉クレープ包み光陵

南楊州の1日モデルコースは?

実用メモ

月曜はNG。実学博物館、洪裕陵、光陵はいずれも月曜休み。韓服を着れば王陵は無料です。

川辺は自転車でつなぐ。陵内駅を通る旧中央線の線路は自転車道になり、雲吉山近くの旧北漢江鉄橋は自転車で楊平側へ渡れます。自転車の借り方はソウルの自転車・登山レンタル比較で。

茶山を追って水原へ。彼が考案した起重機は華城の築城に使われました。水原ガイドもどうぞ。

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データと出典

  • 実学博物館(京畿文化財団)開館時間・料金・解説・展示 — https://silhak.ggcf.kr/ 、交通案内とバス路線 — https://silhak.ggcf.kr/pages/directions
  • 国家遺産庁 宮・陵遺跡本部 — https://royal.khs.go.kr/ROYAL/contents/R703000000.do
  • 南楊州市「水の庭園」— https://www.nyj.go.kr/culture/contents.do?key=4314
  • 飲食店:韓国観光公社の掲載情報(K-Trip Tips、2025年更新)— キワチプ・スンドゥブ https://www.ktriptips.com/kor/food/133834 /カムナムチプ https://www.ktriptips.com/kor/food/133832 /チュギョジュヌン・トンチミククス https://www.ktriptips.com/kor/food/2857667 /光陵ハノク https://www.ktriptips.com/kor/food/2869033。京畿観光公社レストラン情報(ggtour.or.kr、2026-10-26更新)と照合、2026-10-31確認
  • 韓国語版Wikipedia:丁若鏞 https://ko.wikipedia.org/wiki/정약용 、水鐘寺 https://ko.wikipedia.org/wiki/수종사 、洪裕陵 https://ko.wikipedia.org/wiki/홍유릉 、光陵 https://ko.wikipedia.org/wiki/광릉_(조선) 、国立樹木園 https://ko.wikipedia.org/wiki/국립수목원 、雲吉山駅 https://ko.wikipedia.org/wiki/운길산역 、陵内駅 https://ko.wikipedia.org/wiki/능내역 、南楊州市 https://ko.wikipedia.org/wiki/남양주시
  • Wikipedia「Royal Tombs of the Joseon Dynasty」(2009年ユネスコ登録)— https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Tombs_of_the_Joseon_Dynasty 、南楊州の人口と沿革 — https://en.wikipedia.org/wiki/Namyangju
  • 8号線別内延伸(2024年8月)と蚕室〜別内の所要時間 — https://mediahub.seoul.go.kr/archives/2011685